ストレージソリューションの選定
[更新日:2025年09月30日]
基本方針
さくらのクラウドは、多様なワークロード要件に応えるため、複数のストレージサービスを提供します。これらのサービスは、アクセス形式(ブロック、オブジェクト)、性能要件(IOPS、スループット)、データの利用頻度、そして複数のゾーンにまたがる可用性や耐障害性の要件などを考慮して選択します。
最適なパフォーマンスとコスト効率を実現するために必要な基本方針には、以下があります。
データの種類や使われ方を正確に把握し、アクセス頻度、想定されるデータサイズ、データの増加量、必要なアクセス形式を分析する
レイテンシ、スループット、IOPSといった指標を計測し、データに基づいて判断する
データへのアクセス権限を必要最小限に限定し、悪意ある攻撃からの保護と意図しないアクセスによる予期せぬ負荷の発生を防ぐ
アプリケーション要件の把握
システムの性能要件を定義するため、ワークロードにとって重要なストレージの性能指標(ファイルサイズ、アクセスパターン、許容レイテンシ、必要スループット、データの永続性など)を具体的に洗い出します。可能であれば、ベンチマークや負荷テストを実施し、データに基づいた客観的なアプローチで要件を定義します。
このデータを用いて、現状のストレージ構成でどこがボトルネックになっているかを特定し、より適切なプランや構成オプションを検討します。
利用可能なストレージオプション
アプリケーションが必要とするストレージのアクセス形式と性能要件を評価します。それぞれのサービスには利点と欠点があるため、アプリケーションの要件と照らし合わせて慎重に評価します。
さくらのクラウドで利用可能な主なストレージオプションには、以下のものがあります。
ディスク(ブロックストレージ)
サーバにネットワーク経由で接続されるブロックストレージ。SSDプランは、高速なI/O性能が求められるデータベースや頻繁に読み書きが発生するWebサーバに適しています。標準プランは、大容量でコストを抑えたい用途やアクセス頻度が比較的低いデータの保存場所に向いています。
オブジェクトストレージ
APIを通じてアクセスする、スケーラブルで耐久性の高いストレージサービス。ウェブサイトの画像や動画などの静的コンテンツ配信、大容量のバックアップデータやログファイルの長期保管、アプリケーションが生成するデータの置き場所として活用できます。
NFSアプライアンス
マネージドサービスとして提供される、永続的でスケーラブルなネットワークファイルシステム。複数のサーバから同一のファイルシステムに同時アクセスでき、Webサーバ間でのコンテンツ共有や、複数人で開発する際のファイル一元管理に最適です。
ストレージのライフサイクル管理
ディスク、アーカイブ、オブジェクトストレージといった各種ストレージサービスの特性を理解することが重要です。データの重要度やアクセス頻度といったライフサイクルに合わせて、各種ストレージサービスを適切に使い分けることで、ストレージコストを削減できます。
ストレージライフサイクル管理の要点は、以下のとおりです。
サーバ削除後も残る「孤立ディスク」を定期的に検出して削除する
長期保管が必要なデータには低コストなアーカイブストレージを活用し、不要になったアーカイブは適切に削除する
オブジェクトストレージにおいては、一定期間アクセスされていないオブジェクトをAPIでリストアップし、より安価なストレージへ移動する
ネットワークパフォーマンスの最適化
最適なネットワーク構成は、システム要件に応じて、低遅延、高スループット、冗長性の確保など、様々な要素によって決まります。ここで実装するネットワークアーキテクチャは、アプリケーション全体のパフォーマンスに直接的な影響を与えます。
ネットワーク最適化の主な手法は、以下のとおりです。
ロードバランサによる負荷分散とSSL/TLSオフロード機能を活用し、各サーバのCPU負荷を軽減する
システムを、アプリケーションの主要な利用者に近いゾーンに構築し、通信の遅延を最小限に抑える
複数のゾーンにまたがってサービスを展開する場合、GSLB(広域負荷分散)を利用して、ユーザを地理的に最も近いサーバへと誘導する
将来の成長を想定した設計
クラウドの利点は、小さく始められることにあります。需要の増加や、事業の拡大に合わせて柔軟にシステムを拡張できます。
システムの構成(Webサーバ、アプリケーションサーバ、データベースなど)を評価し、それぞれの拡張特性を理解します。どのようにスケールさせるか、そのためにどのサービスや設計パターンが最適かを検討しましょう。
さくらのクラウドが提供する「オートスケール」のような機能を活用すると、手動での介入を最小限に抑えながら、需要に応じてリソースを自動的に増減させることが可能です。
負荷テストを実施して、アプリケーションがどのようにスケールするか、また特定のコンポーネントがボトルネックにならないかを確認します。
また、アカウントごとに設定されているリソースの上限が、将来のスケールアウト時に制約とならないか考慮しましょう。特に、本番環境と開発環境などを同一アカウントで運用する場合は、本番環境のリソース確保に影響が出ないよう、リソース管理のルールを設けることが重要です。
過去のアクセスデータやパフォーマンスの履歴があれば、それを分析して、需要傾向を予測可能かどうか確認します。たとえば、月末にアクセスが増える、特定のキャンペーン期間中に負荷が高まるなどです。
将来の成長計画には以下が必要です。
キャパシティプランニング:事業の成長予測に基づき、将来必要となるリソース量を予測
柔軟なアーキテクチャ:効率的にスケールできる(特にスケールアウトしやすい)システム設計
コスト予測:成長シナリオに基づいて、利用料金がどのように推移するかを予測