利用料金とコスト管理

[更新日:2025年09月30日]

クラウド料金モデルの理解

継続的なコスト最適化とは、さくらのクラウド上でサービスを運用するために発生する費用を管理するプロセスです。組織にとって最大のビジネス価値をもたらすよう管理します。このプロセスには多様なアプローチが存在しますが、その根幹は、正確な利用状況と料金データに基づきます。コントロールパネルやAPI、そして詳細な利用明細(CSVでダウンロードできます)を通じて提供されます。

コスト最適化は、単なる経費削減ではありません。技術的な改善と財務的な健全性を両立させるための、継続的な取り組みです。この目的の1つは、価値を生まないままコストを発生させるリソースを根絶することにあります。長時間遊休状態のリソースやオーバースペックな構成をなくしましょう。

さくらのクラウド上に展開されたシステムの総所有コスト(TCO)と、その費用対効果を最適化するための選択肢を正確に理解しましょう。各種サービスから利用状況やパフォーマンスに関する指標を収集し、分析できる仕組みの設計が不可欠です。さくらのクラウドは、リソースに関する多様な情報を提供します。システムの設計段階から運用、改善のフェーズまで、継続的にデータを収集し、分析しましょう。支出が急増してないか、低利用率のリソースが増加してないか、プロアクティブに検知するための閾値を設定し、アラートを発する仕組みを構築します。

クラウドの料金モデルは、オンプレミスの設備投資とは根本的に異なります。これにより、常にリソースを適正な規模に保ち、過剰なリソースへの余計な支出を抑制できます。

料金モデルの最適化

料金モデルの最適化は、以下のステップで行います。

クラウドの料金モデルを学ぶ

さくらのクラウドでは、リソースごとに課金の仕組み(時間課金/日額課金/月額課金)が異なります。組織全体の支出を最適化するために、これらの特性を理解します。CPU性能を重視するプラン、メモリ容量を重視するプランなど、システムの特性に合ったサーバプランを選択し、リソースを効率的に利用します。データベースのクエリやインデックス、データ構造をチューニングすることで、より高速で効率的なパフォーマンスを実現できます。

コストガバナンスの導入

複数のチームやプロジェクトでクラウドを利用する場合、コスト評価の方法を統一するためのポリシーやプロセスを定義します。コストを分類し、定期的に利用状況をレビューする仕組みを設けましょう。「利用料金」画面やAPIで取得した情報を基に、あまり利用されていないリソースを特定します。需要に応じた自動スケーリングや不要リソースの削除を徹底することで、クラウド費用を最適化します。

効率の測定

データに基づいたアプローチにより、ビジネス上の価値と、そのために消費したリソースのコストを関連付けて評価できます。これにより、ビジネス目標を達成しつつ、リソースがどれだけ効率的に使われているかを把握し、改善点を発見できます。

クラウドの機能と自動化の活用

オートスケールや各種APIなどの自動化機能や、ロードバランサ、データベースといったマネージドサービスを活用することで、システム運用にかかる総コストを削減できます。これにより、インフラの構築やメンテナンス、OSのアップデートといった、直接的なビジネス価値を生まない作業に費やす時間を減らします。

要件に基づいたリソース稼働

ビジネス要件に基づき、リソースがいつ、どのように必要とされるか、24時間365日の稼働が本当に必要かを定義します。オンプレミスとは異なり、クラウドでは必要に応じてリソースをスケールさせたり、停止・削除したりすることが容易です。この判断が最終的なコストに大きく影響します。たとえば、開発環境は夜間や週末には停止するといった運用で、大幅なコスト削減が可能です。

FinOpsの概念とさくらのクラウドにおける実践

FinOps(Cloud Financial Operations)の観点から言えば、各フェーズ(情報収集、最適化、運用)において、コスト分析、追跡、管理ツールを駆使します。表3にFinOpsの概念とさくらのクラウドにおける実践内容を記します。FinOpsの目標である「可視性の確保」「説明責任の明確化」「継続的な最適化」を実現することが理想です。さくらのクラウドは、さくらのクラウドのような包括的なコスト管理ツール群を標準提供しているわけではありません。しかし、提供される基本的な機能(API、タグ、プロジェクト、利用明細)を組み合わせることで、これらの目標を達成するための強力な基盤を構築することが可能です。

表3. FinOpsの概念とさくらのクラウドにおける実践

FinOpsフェーズと目標

FinOps機能

さくらのクラウドでの実践方法・関連ツール

情報 (Inform): 可視性

請求とレポート

コントロールパネル「料金・お支払い」、利用明細CSVのエクスポートと分析

タグ付けによるコスト配分

リソースへのタグ付け、CSVデータとタグ情報の関連付けによる分析

プロジェクトによるグルーピング

プロジェクト機能によるリソースの論理的分割と管理

最適化 (Optimize): 管理性

料金体系の最適化

料金シミュレーター、時間課金と月額課金の比較検討、割引パスの適用

リソースの最適化(ライトサイジング)

アクティビティグラフによる監視、サーバプランの変更、オートスケールの活用

未使用リソースの特定

APIやCLI (usacloud) を利用したリソースの棚卸しとクリーンアップスクリプトの実装

運用 (Operate): ガバナンス

予算とアラート

APIによる料金取得と外部監視ツール(例: Zabbix, Prometheus, Datadog)やサーバレス機能(例: AWS Lambda, Google Cloud Functions)を連携させたカスタムアラートの実装

ポリシーと統制

タグ付けルールの標準化と徹底、プロジェクト利用ポリシーの策定

役割と責任

効果的なコスト管理は、単一のチームや担当者だけで完結するものではありません。組織内の様々な役割が連携することで初めて実現します(表4)。

表4. 役割と責任

役割(ペルソナ)

主な責務とコスト管理への関与

クラウド管理者/インフラエンジニア

リソースのプロビジョニング、構成管理、運用監視。コスト効率の高いアーキテクチャの設計と実装。ライトサイジングや自動化スクリプトの開発・運用を主導。

アプリケーション開発者

自身が開発・運用するアプリケーションが必要とするリソースの要求。タグ付けルールの遵守。パフォーマンスとコストのバランスを意識した設計。

DevOpsエンジニア

CI/CDパイプラインの構築と運用。インフラのコード化(IaC)を通じたリソース管理の自動化と標準化。コスト監視・アラートシステムの構築と保守。

財務/経理担当者

予算策定と実績管理。請求内容の確認と支払い処理。コスト分析レポートに基づき、事業部門へのチャージバックやショーバックを実施。

プロダクトオーナー/事業責任者

プロダクトやサービスのROI(投資対効果)に対する責任。クラウドコストを事業上の必要経費として理解し、エンジニアリングチームと協力して最適化を推進。

まとめ

このセクションでは、さくらのクラウドにおけるパフォーマンスとコスト最適化のためのベストプラクティスを解説しました。ワークロードとビジネス要件の理解、サーバ、ストレージ、ネットワークといった各リソースの最適化、データに基づいた意思決定、そして継続的なコスト管理が重要です。これらの実践を通じて、さくらのクラウド環境を最大限に活用し、ビジネス価値を最大化することを目指しましょう。

参考リンク

  • さくらのクラウド サーバ :サーバのスペックや料金プランです。

  • オートスケール :負荷に応じてサーバ台数を自動で増減させる機能です。

  • ロードバランサ :トラフィックを分散し、システムの可用性とスケーラビリティを向上させます。

  • データベース(アプライアンス) :冗長化やバックアップ等の運用をオフロードできる、マネージド型のRDBMSです。

  • さくらのクラウド 専有ホスト :物理サーバ1台を専有する「占有ホスト」、CPUコアを専有する「コア占有プラン」の詳細です。

  • 高火力 VRT (GPUプラン) :NVIDIA社のGPUを搭載した、AI開発や科学技術計算向けの専用プランです。

  • サーバのプラン変更 :サーバのCPUやメモリを変更する手順です。

  • アクティビティグラフ :リソースの稼働状況をグラフで確認できる機能です。

  • タグ機能 :リソースに任意のタグを付与し、コスト管理や運用効率化に活用できます。

  • シンプル監視 :サーバの死活監視やリソースの閾値監視、アラート通知を設定できます。

  • さくらのクラウド ディスク(サーバストレージ) :サーバに接続できるブロックストレージです。SSDプランと標準プラン(HDD)があります。

  • アーカイブ :ディスク全体のバックアップを低コストで保管できる機能です。

  • オブジェクトストレージ :ウェブサイトの静的コンテンツやバックアップデータなどを、容量無制限で保管できるS3互換のストレージサービスです。

  • NFS :複数のサーバから同時アクセスできる、マネージド型の共有ファイルストレージです。

  • さくらのクラウドAPI :APIを利用して、リソースの操作や情報取得を自動化することができます。

  • スタートアップスクリプト :サーバ作成時にスクリプトを自動実行し、ミドルウェアのインストールや初期設定を自動化できます。

  • usacloud (公式CLI) :コマンドラインから、さくらのクラウドを操作できる公式ツールです。日々の運用やCI/CDパイプラインへの組み込みに便利です。

  • リージョン・ゾーン :石狩・東京など、サービスの提供基盤となるデータセンターの物理的な所在地に関する情報です。

  • GSLB :DNSを利用して、ユーザを地理的に近い、または最適なサーバへ誘導する広域負荷分散サービスです。

  • VPNルータ :プライベートネットワーク間のルーティングや、VPN接続、NATなどの機能を提供するアプライアンスです。

  • スイッチ, ルータ+スイッチ :プライベートネットワークのセグメントを作成・管理するための基本的なネットワーク機能です。

  • パケットフィルタ :サーバのネットワークインターフェースに適用し、不要な通信を制御するファイアウォール機能です。

  • ブリッジ接続 :異なるゾーンにあるスイッチ同士をL2で接続する機能です。

  • ハイブリッド接続 :オンプレミス環境とさくらのクラウドを閉域網で接続する専用線サービスです。

  • 料金 :サービスの料金体系や支払い方法に関する公式案内です。

  • 料金・お支払い(マニュアル) :コントロールパネルでの料金確認方法や、利用明細CSVのダウンロード手順について解説しています。

  • 料金シミュレーション :希望する構成の利用料金を事前に試算できる公式ツールです。