複数のリージョンを用いた冗長構成

[更新日:2025年09月30日]

さくらのクラウドにおける「複数のリージョンを用いた冗長構成」は、システムの可用性を最大限に高めるための堅牢なアプローチです(図2)。単一障害点を排除し、継続的なサービス提供を目指す企業にとって、有効な選択肢となります。

図2:複数のリージョンを用いた冗長構成

冗長化の基本概念

この構成では、主要なサーバを地理的に離れた複数のリージョン(例:石狩と東京)に配置します。それぞれのリージョンで同じ機能を持つシステムを稼働させ、サービスを二重化します。

これにより、以下のメリットが得られます。

  • 可用性の向上: 単一リージョンに依存しません。そのため、自然災害や広域ネットワーク障害といった、リージョン全体に影響を及ぼす事態でも、サービスを継続できます。

  • ディザスタリカバリ(DR)対応: 広域災害に対する回復力(レジリエンス)を高めます。これは事業継続計画(BCP)の重要な要素です。

  • コスト効率: さくらのクラウドは、リージョン間の接続コストを抑えています。一般的なクラウドプロバイダーと比べて、低コストでDR構成を実現できる可能性があります。

主要な構成要素と連携

複数のリージョンを用いた冗長構成では、以下の要素が連携して動作します。

Webサーバの冗長化とGSLB

各リージョンにWebサーバを配置し、独立して機能させます。ユーザからのアクセスはGSLB(広域負荷分散)によって制御されます。GSLBは、稼働中のリージョンにトラフィックを誘導し、片方のリージョンが停止しても自動でもう一方へ切り替わります。

DBサーバの冗長化とデータレプリケーション

各リージョンにDBサーバを配置し、リージョン間をブリッジ接続で結びます。このブリッジ接続を介して、DBサーバ間でリアルタイムまたは準リアルタイムでデータを同期(レプリケーション)します。

プライベートネットワークによる通信のセキュア化

各リージョン内のWebサーバとDBサーバ間の通信は、パブリックネットワークではなくプライベートネットワーク経由で行います。これにより、セキュアな内部通信経路を確保し、セキュリティリスクを低減します。

運用の柔軟性と拡張性

この冗長構成は、構築後の運用においても高い柔軟性を提供します。

  • リソースの増設: サーバ作成後も、CPUコア数、メモリ容量、ストレージを柔軟に増設できます。

  • サーバの複製(アーカイブ機能): 稼働中のサーバからアーカイブを作成することで、簡単にサーバの複製が行えます。

  • スケールアップ・スケールアウト対応: GSLBとサーバのリソース増強機能を組み合わせることで、トラフィックの変動に応じたスケールアップ・スケールアウトが可能です。

考慮すべき課題と対策

複数のリージョン構成は高い可用性を提供しますが、いくつかの注意点があります。

  • DBサーバのフェイルオーバー: お客様自身での構築が必要です。自動フェイルオーバーの仕組みを慎重に設計・実装してください。

  • データベースのリードレプリカ: マネージドデータベースの種類によっては、ゾーンをまたいだリードレプリカに非対応の場合があります。事前に利用するデータベースの特性を把握しておくことが重要です。

  • データ同期のレイテンシ: リージョン間の距離により、データ同期にわずかな遅延が発生する可能性があります。この影響を評価し、必要であればアプリケーション設計で対策を講じてください。